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分析セラピーで何が起こるのか

更新日:1月23日

ウェブサイトの「分析セラピーとは」では、精神分析が自分の人生を切り開いていく転機となりうるものである旨、書きましたが、些か話が包括的すぎて、自分の探しものが見つかるものかどうか不確かだと思われた方もおいででしょう。この記事では、もう少し身近な例から、分析セラピーではどのようなことが起こるのか、描いてみようと思います。


私自身の経験では、分析を受けて車の運転がうまくなりました!

むしろ「?」マークが頭の中で増えたでしょうか・・

もちろん、精神分析によって運転技術が向上するわけではありません。

では、なぜ運転がうまくなったのでしょう・・


様々な色、素材が混ざり合う、松木沙くらさんの抽象画作品

私は以前、できるだけ他の車に迷惑をかけないよう注意し、卒のない洗練された運転をするドライバーであろうとしていました。そのため、絶対に後方車の気に障らない車線変更をしようとしてタイミングを逸したり、渋滞する道路では車線変更の隙間が見つからず、曲がる予定のところで曲がれないまま直進したりしていました。絶対に対向車にブレーキを踏ませず、かつ後方車に「遅い」と思わせないように曲がろうとして、右折のたびに緊張し、交通量の多い道路ではできるだけ右折を避けるようなコースを取っていました。道に迷って停車などしていると、ふだんそのあたりを走り慣れている車から「おいおい、こんなとこでなにやってんだよ」と思われないかと不安で、迷っていても地図を確かめずにグルグルと走り回ったりしていました。こうして告白してみると、ずいぶんやせ我慢のドライバーだなぁと思いますが、これが以前の私でした。


やせ我慢と書きましたが、なぜそうなるのかといえば、一つには、周りのドライバーがずいぶんと心の狭い人たちに見えているからです。洗練された運転をしていないと、いつあら探しをされるかわからないと私が思っていることが見て取れます。ですが、実際には道路は譲り合いの場です。お互い迷惑を掛け合ってなんぼなところがあります。「どうも、ちょっとすみませんね、ありがとうございます」とか、「ちょっとこのあたりは不慣れなもので、すみませんねぇ」とかいった気持ちで譲ってもらったり、逆に自分が譲ったりしながら、お互い様で運転していればいいのですね。


そのあたりが合点がいってから、私は車での行動範囲が格段に広がり、初めての場所にも緊張せずに車で行ってみようと思えるようになりました。車線変更や右折も上手になり、周りの車や歩行者への目配りも広くなったように思います。


つまり、運転技術が向上したから運転がうまくなったのではなく、余計なことに気を揉むことに費やされていた心の容量が解放されてゆとりが生まれたことで、本来の運転技術が存分に発揮されるようになったということです。


おもしろいのは、別に分析セッションで車の運転のことを話し合っていたわけではないということです。分析セッションでの内的なワークが血肉化されていったところで、「あぁ、これは運転のときに自分がやっていることも同じだな」と結びつくのです。つまり、分析セッションにおけるセラピストとのワークが血肉化され、自己分析が進み出すのです。これが精神分析の醍醐味の一つと言っていいでしょう。


ここで、「洗練された運転をしたい」という動機を振り返ってみましょう。ここには、「自分は誰の世話にもならず、自己完結した人間でありたい」という、些か傲慢な欲望が見え隠れしています。傲慢と言ってもいいですし、子どもから見たおとなイメージにしがみついているとも言えそうです。子どもは、「おとなは何でも一人でできる」と思っているものですから。でも、実際のおとなは誰かの世話になっていることを受け入れているものですね。つまりここには、おとなのフリをした子どもから、子どもにもなれるおとなへと成長できるかどうか、というテーマが内包されていることがわかります。


落ち葉を掃除する彫刻
里佳孝 「秋の庭」 2021

ここまでくると、私が車の運転の話から始めた理由が見えてきたかもしれません。部分は全体とつながっており、全体は部分に収斂します。自分の人生の主役になれるか、自分に嘘をついていないか、といった人生上のテーマは壮大で、地に足がつかなくなってしまうように見えます。しかし、分析セラピーにおいては、地に足をつけてこれに取り組むのです。自分の生き方といった一見抽象的なテーマが、ごく身近な日常のあれこれに落とし込まれ、実質を帯びます。そうした実質を帯びた日々を具体的に生きる経験が、自分と向き合うという(頭だけでやると浮足立ってしまう)壮大なワークに取り組んでいるという実感を支えるのです。


さて、分析セラピーについて、ウェブサイトとは違った視点から書いてみました。なんらかお探しのものが見つかったようであれば幸いです。

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